スタイリスト伊賀大介、フォトグラファー藤代冥砂ら4人の愛用本棚と愛読書
スタイリスト伊賀大介、フォトグラファー藤代冥砂、漫画家井上三太、FACTOTUMデザイナー有働幸司4人の自宅や事務所でリアルに愛用する書棚を拝見。小説、エッセイ、漫画など自身の愛読書3冊をチョイスして頂き、感想文付きで紹介!
目次
伊賀大介 / スタイリスト
多い時は1ヶ月に50冊は読んでいた
まさしく「本の虫」という言葉がぴったりな伊賀大介。
「昔は運転免許を持ってなくて仕事の車はアシスタントが運転していたので、横で本が読めたんです。だから1日のうち、作業以外はすべて本を読んでいた(笑)。読み出すと、他が見えなくなっちゃう質なんです。その頃、多い時で1ヶ月に50冊くらいは読んでいました。ファッションアイテムでは収集癖はないのに、本はどんどんたまっていく。数えたことはないけど、冊数はおそらく万単位だと思います」。
「小説からサブカル本、漫画、雑誌まで本当になんでも読みますが、昔より評伝ものとかドキュメンタリーものの割合が少し増えました。“仕事のために”と思って読むことはあまりないけど、読んだものは何らかの形で仕事に落とし込まれるので、無駄な本はひとつもありません」
撮影協力/J-COOK
『かくかくしかじか』東村アキコ
「よく“都会育ちでイーネッ!”なんて言われるが(新宿っす)、どっこい此方にゃない田舎や方言、そして何より涙ナシじゃ語れない上京のストーリー!!と言うわけで、昔から条件ナシで憧れる若者たちの上京物語。『まんが道』『俺節』『すかんぴんウォーク』『東京タワー』等名作は多々あるが、2012年に出てきた新しいマスターピースこそが、東村アキコ先生による半自伝青春漫画『かくかくしかじか』である。主人公が“ねぇ先生”と過去に呼びかけるたび、切なくなるコチラの心のずっと奥の方(©THE BLUE HEARTS)。誰しも感じたことがあるであろう“まだ何者にもなっていない感”と十代後半の“無敵感”がダブルで押し寄せ苦笑い。とはいえ東村印、枠外の注釈なんかが相変わらずスゲー笑えるので文句なし!!! つい先日刊行された2巻もヤバすぎた。コレ安易に映画化して駄作にする馬鹿がいたら死刑だな、ってほどのクオリティ。さあみんなとっとと本屋へ」
『想像ラジオ』いとうせいこう
「いとうさんの16年ぶりの小説。まあ本当に面白いです。想像もラジオも、ともに目に見えないもの。それを小説という文字の羅列の中から想像する……。とにかく全国民に読んでほしい本」
『非道に生きる』園子温
「園さんがどう映画監督になったのかが描かれていて、笑えるんだけど、とにかく壮絶。漫然と死を迎えるよりこんな風に日々を生きたいなっていう、自分的な“自己啓発書”です」
藤代冥砂 / 写真家・小説家
早朝、子どもが起き出すまでの静謐なる読書
「東京にいた頃は時間がなくて、読むのは写真集や画集が主でした。それが沖縄に来てからは、体や農業についての本を「じっくり」読むようになった。特に好きなのが、早朝4時過ぎに起きてから、子どもが起き出すまでの時間。頭はクリアだしエネルギーに満ちている感じがして、とてもいい読書ができます」。
新しい本はあまり買わないということで、藤代冥砂的な大定番3冊を紹介。
ビジュアル書とともに自然療法・東洋医学、自然科学、ヨガ・タイマッサージ、哲学・スピリチュアル系の本が雑多に並ぶ。壁一面が本棚だった葉山在住時代からかなりの冊数をシェイプしたそう
『クリシュナムルティの瞑想録』J・クリシュナムルティ
「瞑想は、堅苦しく、修行のイメージがあるけれど、実際は快楽に近い気がします。悟りを目指すわけでもなく、ただリラックスして座り、姿勢と呼吸を整えて目を閉じれば(閉じなくてもいい)もう、それが瞑想。特に何かに集中したりする必要もなく、緩やかに心の動きを観察し、それに正誤をつけるでもなく、ああ自分はこう感じたり思ったりしているのかと、客観的に受け入れ、心の内の景色を、川を眺めるようにしていればいいと思います。そうしているうちに、きっと穏やかな状態になっているはずです。食べ物が体への栄養だとしたら、瞑想によってもたらされる平穏は、心への栄養だと実感してます。こういうような瞑想感覚を実感できるのが、クリシュナムルティの瞑想録で、日記のような、つぶやきのような、それでいて格別に美しい文章は読んでいるだけで、瞑想しているかのようです」
『18』大竹伸朗
「大竹さんが北海道の牧場で農夫として働いていた18歳の頃に残した写真や絵を中心に構成。本の中に独特の“風”が吹いていて、ものを作る原点の感覚を呼び戻してくれます」
『太陽の鉛筆』東松照明
「昨年12月に亡くなった東松さんの’70年代の写真集。彼からは、“◯◯カメラマン”とくくることのできない写真活動をすることのしなやかさやかっこよさを感じ、学びました」