クリエイター5人の行きつけの本屋5選と愛読書19選
曽我部恵一、本城直季、中沢理洋、山本あゆみ、前田義貴らの5人のクリエイターのお気に入りの書店5選や愛読書19選を紹介。インスピレーションの源として、仕事の資料として、気分転換として、クリエイターはさまざまな本を読んでいる。
目次
曽我部恵一
「下北沢に住みはじめてからずっと『DORAMA』には通っています。遅くまでやっているので仕事やライブの帰りに寄れるのがいいんですよ。新刊を売っている書店にはあまり行かないですね。世間の流行とか売れ筋とかと関係なく、古い本も新しい本もカテゴリーもさまざまに、雑多に本が置かれている古本屋さんが好きなんです。全然知らなかった本に出会えたり、100円均一のワゴンの中でいい本を見つけたり、そういう楽しさがありますね。本との出会いはあくまでも“縁”だと思います。そんなに欲しい本でなくてもちょっと気になったら一応買って連れて帰る。するとその本が意外に人生の大きな出会いだったりするんです」。
PICK UP BOOKS
01_『東電OL殺人事件』/冤罪判決や被害者の私生活でも話題になった事件を掘り下げた佐野眞一の著書。心の深い部分まで描かれており読み応えがある。
02_『ひきこもれ』/愛読している吉本隆明の著書。ひきこもる時間の大切さが明解な言葉で記されている。
03_『ケースケランド』/桑田佳祐の’80年代のエッセイ集。「音楽をやる人間として手元に1冊置いておきたい本です」。
04_『男の花道』/先日ワゴンで見つけて100円で購入。「杉作J太郎さんの言葉はなぜか心に残るんです」。
05_『暗夜行路』/志賀直哉の名著。「This is 純文学。重厚で読むのに体力を使います」
曽我部恵一(ミュージシャン)
1971年生まれ、香川県出身。’92年に「サニーデイ・サービス」を結成。’04年には自身のレーベル「ROSE RECORDS」を設立。ジャンルや形式にとらわれることなく、唯一無二な歌を追求すべく活動を続けている
DORAMA 下北沢 PART5
ADDRESS_東京都世田谷区北沢2-14-10
TEL_03-3414-0049
STORE HOURS_10:00〜25:00
HOLIDAY_無休
深夜1:00まで開いていて便利。下北沢らしいサブカル系の書籍や漫画も豊富にラインナップ
本城直季
「フォトグラファーにとって、他の作家の写真集を見るのは重要だと思います。僕がよく行くのは表参道にある『ユトレヒト』という書店です。ここでは自費出版の写真集なども多く扱っていて、通常の書店では見られない個性的な作品を発見することができます。僕も含め、仲間のフォトグラファーたちも作品を置いてもらったことがあるのですが、やはり自分にはない視点を持った他の人の撮った写真からは大きな刺激を受けますね」。
PICK UP BOOKS
01_『人』/同じく本城氏の仲間である渡辺一城の写真集。豚が食肉になるまでの過程を撮影。「まるで人間のような豚の眼が印象的です」
02_『torii』/本城氏の友人である下道基行の写真集。世界各地に残る神社の鳥居を記録している。「独特の視点が面白いですよね」。
03_『Daydream』/N.Y.に住む中年女性たちが自らの部屋でポージングした姿を撮影した写真集。ともにスタジオを構える牧野智晃の作品。
04_『A BOOK OF FIELD STUDIES』/イギリス出身の写真家、スティーブン・ギルの写真集。ユトレヒトでの彼のフェアで出会った。
05_『OUTSIDE IN』/同じくスティーブン・ギルの写真集。海沿いの町で拾ったさまざまなものを“カメラの中”に入れて撮影した
本城直季(写真家)
1978年生まれ、東京都出身。東京工芸大学卒業、同大学院修了。実際の風景や人物をミニチュアのように見せる手法が有名。06年には「small planet」で木村伊兵衛賞を受賞した
ユトレヒト
ADDRESS_東京都港区南青山5-3-8-201
TEL_03-6427-4041
STORE HOURS_12:00〜20:00
HOLIDAY_月曜
一般の書店では取り扱っていない自費出版や少部数のアート、
デザイン、ファッション関連書籍をラインナップしている
中沢理洋
「『ALOYE』(アロイ)というカットソーブランドを3人で運営しているのですが、今、事務所の移転先を探しています。今の時代にブランドとしてどこに拠点を構えるべきなのか、それを考えるために今回セレクトしたような本からヒントを得ています。また、ブランドをやっていると、その反響から東京と地方との感覚的な違いを感じることもあります。そういうことを掘り下げて考えるうえでも、こうした地域と文化の関係性が書かれた本は興味深いですね」。
PICK UP BOOKS
01_『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』/日本全国にある珍スポットを紹介して話題となった都築響一の著書。「アメリカの古書店で手に入れたものです。巨大な仏像の写真などを見ると鳥肌が立つ。僕にとってはまるで読むドラッグです」。
02_『アースダイバー』/縄文時代の地形と現代の東京をクロスオーバーさせ、その関連性を探る中沢新一の1冊。「なぜ銀座にブランドショップが集まるのかなど独自の考察がなされています。事務所の移転先を考えるうえで参考にさせてもらいました」
中沢理洋(ALOYEデザイナー)
1979年生まれ、新潟県出身。千葉大学工学部卒業後、映像編集やグラフィックデザインに携わる。その後、地元の仲間3人と2011年からカットソーブランド「ALOYE」をスタート。BEAMS Tなどでも取り扱い中
青山ブックセンター六本木店
ADDRESS_東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
TEL_03-3479-0479
STORE HOURS_10:00〜23:30(日曜 10:00〜22:00)
HOLIDAY_無休
「ブランドスタート前に深夜によく通った」とのこと。アート系の書籍のラインナップの豊富さにも定評がある
山本あゆみ
「あまり起伏が激しくなくて淡々とした話、長編よりも短編の方が好きです。『まんだらけ渋谷店』でジャケ買いした森雅之さんの漫画は、そんな私の好みにぴったりでした。ちょっとせつない感じで、ちょっと幸せな感じ。10年前に買ったものですが、今でもよく読み返します。何度読んでも10年前と同じ気持ちで読めるんです。作者と自分の感覚が近いのでしょうか。新しく本も買っていますが、結局この本に戻ってくるんです」。
PICK UP BOOKS
01_『夜と薔薇』/森雅之の最初の作品集。「引っ越すたびに本を処分してきましたが、森雅之さんの本だけは段ボールからすぐに出して本棚に並べます」。
02_『追伸 二人の手紙物語』/遠距離恋愛の恋人同士の手紙のやり取りを描く切ないラブストーリー。
03_『散歩しながらうたう唄』/森雅之の作品集の第2弾。作者は北海道在住で活動している。
04_『耳の散歩』/タイトルの面白さにジャケ買いしたという、山本さんの一番お気に入りの作品。まるで詩のような不思議な作品
山本あゆみ(写真家)
1980年生まれ、鳥取県出身。夙川短期大学、東京ビジュアルアーツ卒業後、08年にイイノ・メディアプロ入社。’10年より平野太呂に師事し、’12年に独立。雑誌を中心に活動中
まんだらけ渋谷店
ADDRESS_東京都渋谷区宇田川町31-2 渋谷BEAM B2
TEL_03-3477-0777
STORE HOURS_12:00〜20:00
HOLIDAY_無休
漫画やアニメ関連専門のコレクターズショップとして知られ、圧倒的な在庫量を誇っている
前田義貴
「以前JリーグでGKとしてプレーしていたのですが、『キャプテン翼』はやはりバイブルでした。引退してからはサッカー雑誌の編集長を経て、営業や事業に携わるようになったこともあり、サッカー関連はもちろんビジネス書も多く読むようになりました。役立つ情報を得るために読書するのはもちろんですが、カフェのオープンテラスで脚を組みながら本を読み、そんな自分に酔う。たまにやっているのですが、そのためにいつも本を持ち歩いていたりもします(笑)」。
PICK UP BOOKS
01_『セルジオ越後 辛口の真実』/「辛口で知られるセルジオさんですが、辛口の理由、根底にあるサッカー愛がストレートな言葉で綴られています。サッカー界の裏側もわかる1冊です」。
02_『情熱を貫く 亡き父との、不屈のサッカー人生』/日本代表にも選ばれた大久保嘉人が父との思い出を中心にサッカー人生を振り返った1冊。「サッカー選手の日常がリアルに描かれていて、現役時代を思い出します。WC終了後に読むとまた違った余韻に浸れるでしょう」。
03_『キャプテン翼』全シリーズ/言うまでもなく世界中のサッカー選手のバイブル。「僕は若林くんに憧れてGKになりました」
前田義貴(元プロサッカー選手/キャプテン翼スタジアム支配人)
1978年生まれ、埼玉県出身。千葉大学工学部卒業。アートディレクター/グラフィックデザイナーとして、広告やアパレル、ブランディングなど幅広い分野で活躍している
有隣堂 アトレ目黒店
ADDRESS_東京都品川区上大崎2-16-9 アトレ目黒1 5F
TEL_03-3443-1231
STORE HOURS_10:00〜21:00
HOLIDAY_無休
「仕事帰りに寄れるし、品揃えも豊富なので自宅近くの有隣堂によく行きます。ビジネス書をチェックすることが多いですね」
※2014年06月発行『i bought VOL.06』に掲載された記事です。
※価格・販売状況は掲載当時のものになります。