カジヒデキ、Shing02、古川太一ら8名のクリエイターが購入したレコード
レコードというフォーマットに惹かれ、魅せられ、こだわりをもって購入し続けるクリエイターが多数存在する。
カジヒデキ、Shing02、アレキサンダー・リー・チャン、古川太一、RYUHEI THE MANなど8名が最近買ったレコードをご紹介。
目次
Shing02
THE MONKEES
HEADQUARTERS
購入場所 /Jelly (Hawaii)
購入時期 /7月くらい
購入価格 /約$10
「自分は何万枚も所有するアナログコレクターじゃないんですが、アナログ文化は大好きです。ビートを作り始めた時も、レコード店が捨てた傷モノの箱を持ち帰ってサンプリングやスクラッチのネタにしたり、安いレコードからいかに面白いものを作るかというテーマでやってました。リサイクルショップやフリマのレコードから掘り出し物を嗅ぎ分けます。もちろん、レコード店も図書館に行くような気持ちで勉強になります。昔ならではのデザインのセンス、アナログのジャケにしかないロマンもありますね。今回紹介するのは僕の師である、Del The Funky Homosapi enの『Mistadobalina』のネタ『Zilch』が収録されているMONKEESのアナログです。これ、DJでも案外知らない人も多いんですよね。昔持っていたんですが紛失してしまったので、また聴きたいと思って探してたらどこにもなくて、何気なく入ったハワイのJelly’sで発見! そういう時は本当に縁を感じますね」
Shing02 MC カリフォルニアを拠点に活動するバイリンガルMC/プロデューサー。DJ Ice waterとの共作「FOR THE TYME BEING4」、ミックスCD「LIVE FROM ANNEN ANNEX」が絶賛発売中。DJ $HINとのアルバム「1200 Ways」をリリースする他、日本語盤の「有事通信」も控えている |
森本雑感
矢野顕子
いろはにこんぺいとう
購入場所 /disc gallery (東京)
購入時期 /最近
購入価格 /500円を400円にしてもらう
「僕が住んでいる街の最寄り駅にはスーパーが2つあるけれど、買い物は商店街で済ませることが多い。例えば商店街へ入ってすぐの右側にある肉屋で若鶏のモモ肉を1枚買い、例えばそこから少し行ったところの八百屋でレタスとトマトとアスパラと玉ねぎとネギを買う。夕飯の買い物が片手で済んだ時は八百屋の向かいにあるレコード屋さんへ寄ってみて、目が合ったレコードを買って帰る。週に何回か繰り返される日常ルーティーンに差し込まれる新しい音楽との出会いはいつだってレコード。果てしなく広がる音楽の宇宙への入り口は日常のささやかな運命によって導かれるものであって欲しいという個人的な願望を具現化するにはアナログでなくてはならないのだ。ジャケットから放たれる、矢野顕子の鋭く強く激しく不敵なこの視線を感じてしまったらもう買うしかないだろう。音楽への入り口は日常にあり、そこには手に持った時の質感を伴わなければならない」
森本雑感 BREAKfAST BREAKfASTのヴォーカルですが、それ以外の時間はだいたい静かに過ごしています。先日DJ HIGHSCHOOLとのスプリット7inch「split」を出しました。レコードの中でも7inchはまた特別な存在感を出していますね。よろしければ買ってみてください |
カジヒデキ
THE NORTH SEA
THE NORTH SEA TODD TERJE REMIXES
購入場所 /Rough Trade (web)
購入時期 /7月
購入価格 /£8くらい
「待望フランツの4枚目のアルバムからの先行シングル『RIGHT ACTION』は、針を落とした瞬間『お帰りなさい!』と大声で叫び、踊り狂った最強チューン。そして今回紹介するのは“THE NORTH SEA”名義でリリースされた、フランツ新作からの2曲をTODD TERJEが12”用にミックスしたバージョン。この粋な心意気に乾杯! オレンジジュースを彷彿させるトロピカルな『EVIL EYE』はヴァンパイア級のホリデー感だし『STAND~』の方は男前のフランツ節が炸裂! とにかくこの500枚限定の12”の存在を友人から聞いた時は、慌てて購入できそうなサイトを片っ端からチェック。ラフトレで無事に購入できた時の至福感といったら! さてアナログを買い続ける理由は多分とても単純。生まれ育った時からそれは常に側にあり、7”、10”、12”それぞれのジャケットの大きさやそこに施されたデザインのアート性、重さや匂いに至るまで単純に大好きなんです。そう、アートなんです」
カジヒデキ ミュージシャン 1996年ソロデビューからスウェーデンのミュージシャンらと親交を暖め、現在まで多数のアルバムをレコーディング。スウェーディッシュポップスを日本に広め、数多くのCMソングや、プロデュース、楽曲提供の活動や、主宰するクラブ・イベント「BLUE BOYS CLUB」などなど精力的に活動中 |
古川太一
DIRTY BEACHES
DRIFTERS / LOVE IS THE DEVIL
購入場所 /Big Love (東京)
購入時期 /5月
購入価格 /3,500円
「レコードを最初に買った中3の夏休みから、今年の夏まで、約15年間レコードを買わなかった月はない。なぜ僕はレコードが好きで、買い続けるのか。その理由が最近わかった。レコードで手に入る音楽が、一番僕をわくわくさせてくれるからだ。アナログかデジタルか、ジャケットがあるかないか、そういう形式的なことを通り越して決定的な理由が見つかったのだ。例えば、中古の7inch。レコ屋の店主こだわりのセレクト、素晴らしい名曲。レコ屋にレコードを買いに行かないと出会えない。例えば、日々更新される新譜。僕の求めている音は、きちんとセレクトされたレコード屋にあることがわかっている。今の時代にレコードを出す人たちの音楽が、自分と気が合うなんて、当たり前のようにわかる。レコードを追い求めるのが、一番自分の理想に近い音楽に出会える近道なのだ。そして今、DIRTY BEACHESと出会えるのもレコードを追っているからに決まっている」
古川太一 KONCOS 趣味は音楽や絵、鉄道など。音楽を中心に広がるニュー・レーベルSUN NY CLUB主宰。佐藤寛との作詞作曲チームKONCOSでは作曲方面を担当。弟である古川拓也とのデザインチームAnoraksでは、さまざまな媒体にデザインやイラストを提供中 |
RYUHEI THE MAN
Q.A.S.B. + RYUHEI THE MAN
THE MEXICAN PT.1/PT.2
購入場所 /なし
購入時期 /昨年 (製作)
購入価格 /0円
「手前味噌になってしまいますが、日本を代表する実力派現行ファンク・バンドQ. A.S.B.さんを、自身がプロデュースさせていただき、昨年7inchシングルとしてリリースした作品です。ヒップ・ホップ・カルチャー黎明期からDJ/プロデューサー/ブレイカーに愛され続けるBabe Ruthによるクラシック・ファンキー・チューン『THE MEXICAN』のカヴァーです。さらに本カヴァーは、作曲者の許諾を得たオフィシャル・カヴァーでもあります。原曲の素晴らしさを十分に残しつつ、Q.A.S.B.さんの一体となったオリジナルの熱いファンクネスを感じていただけると思います。アナログを買い続ける理由は、いくつになってもドキドキワクワクする無限の楽しさがあるからです。自分が感じるのと同じように自分も皆様にドキドキワクワクしていただけるアナログをリリースし続けていきたいと思います。現在再びQ.A.S.B.さんとのコラボ作品が進行中ですのでどうぞご期待ください!」
RYUHEI THE MAN universounds/The Man’s World Productions 高円寺の中古レコード店universoundsを主宰。ブラック・ミュージックを軸とした幅広い選曲とオリジナリティーに溢れたグルーヴを生み出すDJとして支持を得ている。MIX CDのリリース、プロデュースワーク、執筆活動など、その活動は多岐に渡る |
moe
ALGEBRA SUICIDE
Feminine Squared
購入場所 /FILE-UNDER (名古屋)
購入時期 /この夏
購入価格 /2,000円ほど
「シカゴの前衛夫婦デュオALGEBRA SUICIDEの’82~’88年の音源を集めた作品。チープなドラムマシンに奥様の愛らしいポエトリーリーディング・ヴォーカル、旦那様の奏でるペナペナのギターとシンセが淡々と綴る愛のミニマル・ポスト・パンク。1曲1〜3分の全18曲がびっしりと刻まれている。ブックレットも、蛍光ピンクのインサートも格好いい。さらにライブDVD付き。女子がレコードを買うということは、きっと男子とは少し違うんだと思っている。いろんな色のマニキュアやリップを買うように、人形やぬいぐるみを小さい頃集めたように、レコードを買う。メタリックなCD盤より、大きくて真ん中にラベルのあるヴァイナル盤の方が可愛い。時には盤が透明だったりカラフルだったり、マーブル模様だったり、それにまたときめく。プラスチックより、紙のジャケットの方が愛おしい。片面が終わったらひっくり返して再度針を落としてあげなきゃならないし、曲がってしまわないように扱いに気をつけてあげないといけない。それが、良いのです」
moe Miila and the Geeks/Twee Grrrls Club…etc. Niw! Records所属のバンド・Miila and the Geeksのフロントウーマンであり、ガールズDJチームTwee Grrrls Clubのメンバーでもあり、DIYアクセサリーブランドJoy! を手掛け、カセットテープレーベルPit Ponyも運営する獅子座のB型女子 |
アレキサンダー・リー・チャン
Holger Czukay
My Persian love
購入場所 /スペインのレコード屋
購入時期 /2012年の5月くらい
購入価格 /C15くらい
「去年買ったものですが、ステキな1枚って思ったらコレが出てきた。Holger Czukayの『persian love』のリミックスの12inch。世界1,000枚限定のものなんだけど、コレがまた最高の気持ちよさ、プログレッシブロックであり、ダンスミュージックであり、そしてアンビエントな曲なんです。昔、サントリー角瓶のCMで使われていてそこで初めて知った曲なんですが、原曲もさることながら、原曲のステキなピンピン跳ねるようなサウンドをさらにピニョ~ンピニョ~ンと伸びて跳ねるような音にリミックスしてくれる気持ちよさ。休みの朝方、山の中での朝、砂浜のサンセットで聴くと本当に効くなあ。誰も知らない曲を掘り下げたりするのも好きですし、みんなが知っていて“いいね”って言う曲も本当にステキだと思います。とても、優しく、穏やかで涼しい気分にさせてくれる曲です。限 定の12inchなので手に入りにくいものかもしれませんが、どうしても一度聴きたい! と思ったら、試しにYouTubeで“my persian love”で検索すると聴けるのでよかったら……」
ALI&
ALIZZZ
WHOA!
購入場所 /JETSET RECORDS (東京)
購入時期 /7月末
購入価格 /1,500円
「今年はCashmere Cat、AlunaGeorgeなどの’90s R&Bっぽさのある作品だったり、最新のモードなのかどうかは別として、Jersey Club/Philly Clubというジャンルがマイブーム。似た要素を持ちながら他とは違うメロディアスなALIZZZを、 昨年にデジタルだけで発売された『Loud EP』をゲットした時から、Soundcloud等でずっとチェックし続けてて今回初のフィジカルってことで購入しました(僕の名前に似てるし)。レコードを買い続ける理由って、僕の中では無駄なこと。でも無駄なのわかってるけどモノとして欲しい。例えるなら外資系コーヒーショップでコーヒー、喫茶店でコーヒー。っていうのと近いのかもって。デジタルでいいって人はそれでも全然いいと思います。最近のレコードはダウンロードコードがあるっていう時点で、作り手側も『いろんな環境で聴いて欲しいけどレコードでも聴いてね!』ってことを考えてると思うんです」
ALI& 80KIDZ 2007年に80KIDZとしての活動を開始。1st「This Is My Shit」、2nd「We ekend Warrior」、3rd「TURBO TOWN」の3枚のアルバムをリリース。ライブではギター/シンセ/ヴォーカルを担当。現在ダンストラックをコンセプトとした80シリーズ(「80:01」「80:02」)がiTunesでヒット中 |
※2013年09月発行『i bought VOL.03』に掲載された記事です。
※価格・販売状況は掲載当時のものになります。