窪塚洋介の卍LINE,5thアルバム「KEY MAKER」制作秘話
俳優・窪塚洋介はレゲエDeeJay「卍LINE」(マンジライン)として全国津々浦々の“現場”を訪れ、多くのメッセージを届けている。
卍LINEの5thアルバム「KEY MAKER」とMVができるまでを語ってもらった。
目次
なった形が俺の形。 窪塚洋介のベストバランスが 卍LINEであり、 このアルバム
──今回で5枚目のアルバムとなるわけですが、俳優業と両立した活動の中で、どういったタイミングでアルバムを制作しようと思うのでしょう?
卍LINE もう流れでって感じですね。去年は出してないし。今年は出したいなっていうくらいはあったんだけど、実際去年の夏くらいから(リリックを)書き始めて、iPhoneに溜めてたりもしたんで、それをまとめたり、新たに書き加えたりして。それでひと夏で11曲は出来てて。それに出来てた3曲を追加して14曲出来て。トラックは、いつも通りAKIO(BEATS)にリメイクしてもらったりしつつ、今回は774(ナナシ)っていう超イケてるトラックメイカーがいるんだけど、そいつのストックしているトラックから選んでリリックを乗せてみたりもして。それでこの14曲でいこうと思ったんだけど、冬にバリ旅行に行った時にスゴい楽園を感じて良くて、そこでも3曲書けて。それをまた帰ってきて録ったんだけど、やっぱり先の14曲とは違うマインドで作ってるから、ヴァイブスが全然違うものになって。それをどうやって混ぜようかなって考えたんだけど、やっぱり混ぜきれなくて、結局14曲のDISC 1と、後から録った3曲のDISC 2に分けることにして。
──毎作、コンセプトを掲げて制作に入るんですか?
卍LINE 後づけです(笑)。でも、いつもタイトル候補は制作と同時に考え始めてるんだけど、今回はずっと"コドナ"(コドモ+オトナ)ってよく言ってるからそれを使いたいなと思ったりしてたんだけど、どうもしっくりこなくて。それでどうしようかなと思ってた時に、3曲目の「KEY MAKER」っていう曲がホントは「ドラゴンタイガー」ってタイトルだったんだけど、なぜかイントロで"キーメイカー!"(って叫んでて。なんでこんなところでそんなこと言ってんだろ? って思ってたんだけど(笑)、結果これが一番アルバム全体を言い表している曲のような気がして。ラブのこともバビロンのことも謳ってるし。それでこれがそのままアルバムタイトルの「KEY MAKER」になったっていう。だから俺自体のスタイルや人生も後づけで気づいたりすることが多くて、なった形が俺の形だと思ってるし。どっか目指してなんかの形が見えてて、そこに向かうわけではなくて、いいと思ったものは取り入れてみたり、のめり込んでみたりしながら、世の中に対してリアクションしていった形が今の自分だと思ってるから。だからアルバムの作り方も似てるんだと思う。
──今作はどういったメッセージが込められてますか?
卍LINE これまでとそんなに変わらないかな。普段思ってることとか感じてること、考えてることが反映されてなきゃいけないと思ってるんだけど、前に飛躍して江戸時代の恋愛チューンを作った時もあったけど、基本的には1曲1曲が自分自身の分身でなければならないと思ってるし。(レゲエという)シーンにそうやって教えられてきたとも思ってるんで。だから恋愛の歌もあるし、パーティーの歌もあるし、コンシャスなバビロンの歌もあるし、生き方みたいな歌もあるし。
──ライブの活動も大きくなって、これまでで一番現場の場数を踏んだ上で制作されたアルバムだと思うんですけど、そういった経験が反映されたりってありますか?
卍LINE メチャある。知らない間に、現場(ライブ)を想定して作ったりしてて、この部分はこう変えて歌えるな、とか。レゲエのライブって1曲をフルで歌うことはほとんどないから、頭だけ歌って次の曲いったりとか。だからそれも想定して、3バースまで歌わないんだったら3番いらないじゃんみたいな(笑)。だから無駄を削ぎ落してだいたい2分半から3分くらいの曲になったりするんだけど、1曲ずつが光ってて個性は必ずあるから似たりはしないし。だから今までで一番バランスいいアルバムだとも思ってる。
──今回は限定版のDVDにMVが8曲入ってるんですが、先ほどのライブを想定して曲がタイトになってきたという反面、こういったMVには映像が加わる分、ストーリーがさらに必要になってきますよね? そのバランスはどうやって考えていったのかなと思って。
卍LINE それもさっき言ったコンセプトを設けないって話に繋がるんだけど、「KEY MAKER」に関してはトルコに行った時に時間ができちゃって、そこで「MV撮る!」みたいな感じになって。2本録ったけど即席にしては良く出来たなって仕上がりになってて。ヤーマンくんっていうバスタ・ライムスのMV撮ったクリエイターがCG使ってやってくれた曲とか、ヨネちゃん(米原康正)が俺がお気に入りのAV嬢と絡むMV撮ってくれたり、RUEEDとのコンビチューンは横須賀のファミリーであるチルスタが撮ってくれたり、映像クリエイターの柿本ケンサクが俺の子どもと一緒に撮ってくれたドキュメントタッチのものがあったり。大阪のカメラマン、クロフィンが撮ってくれたMVにはKIDくん(山本KID郁徳)が出演してくれたり。
──今作も、実弟のRUEEDやCHE HONなどのフィーチャリング勢も豪華ですが。
卍LINE いつもフィーチャリングしたいリストっていうのも作ってるんだけど、RUEEDはファミリーだし、前回はバビロンチューンで一緒にやったから、今回はユルい曲でやって陰陽みたいになればいいなと思ってて。CHEHONとはじっくり考え抜いたリリックで共演したくて。だから"水"をテーマに、俺は3.11の話から流れを作って。テリーくん(TER RY THE AKI-06)の曲は(亡くなる前に)最後に残しておいてくれた曲で。これは長い時間がかかったけど、ようやく入れられた曲というか。
──なかなかCDが売れづらいと言われるこの時代に、特別限定版(DVD・特製アシュトレー・豪華BOX仕様)、限定版、通常版といったバリエーションのパッケージを用意してまでリリースする意味とは何ですか?
卍LINE 音楽がどんどん軽く扱えるようになったことはいいと思うこともあるんだけど、やっぱり手に感触のあるものとしてリリースしたくて。
──そういったアナログな方法へのこだわりがありつつ、今回のジャケットのデザインを手掛けるクリエイターはツイッターで募ったりとかイマっぽい方法も取ってたりしてて。
卍LINE そこには打算があって。デザインやってる若いやつとかに夢を見させてあげたいというか。レゲエでも夢だけではなく現実とちゃんと向き合うというメッセージがあってレベルミュージックと呼ばれるわけだから、それをちゃんと全うしたいという気持ちもあって。俺の自分で掲げている標語みたいなのに"馬鹿を利口に、利口を馬鹿に"というのがあって。ちょっとユルい中にしっかりとメッセージ持ったり、真面目にやらなきゃいけない局面でこそそれを砕けさせる心を持っていたり、っていうような意味で。それがなんか俺のバランス感覚なのかな、と思ってて。三宅洋平みたいに矢面に立って「レボリューション」って掲げることは俺はできないけど、俺もいい世の中にしたいって想いとかはあるから、そんな標語を自分の中で持ってると自分でバランス取れて、いろいろやりやすくなってきたと思うこともあって。
──リリースパーティーを皮切りに、ツアーも始まるかと思うんですが、今作の楽曲をどうやってライブで魅せたいとかいう構想はありますか?
卍LINE リリースパーティーはバンドセットなんで、一緒に作り上げていかなきゃって思ってる。もちろん、今回の5thからの曲だけでなくて、これまでの作品からの曲もミックスしたセットを組むしね。10年以上前に作った曲でも言ってることが変わってないから、一緒のセットに組み込めると思うんだよね。このレゲエミュージックのディージェイというのが俺の武器でもあるわけだし。だから新しい曲という武器を入手したから、それを使って全国回ったり、俳優もいい相乗効果が出てきてるから、マイペースにやっていきたいと思ってます。
「KEY MAKER」
7月2日発売(AMATORECORDZ/MONOPOLIZE Inc.)
限定版
通常版
人生の新たな扉を開くための14本の鍵がテーマとなったDISC1と、バリ旅行からインスピレーションを受け“楽園”がテーマとなったDISC2の2枚組を盟友トラックメイカーとともに制作。限定版には4thアルバム「MUZICAL PHOENIX」リリースパーティーのダイジェストムービーと5thアルバム楽曲の8本のMVが収録されたDVDも付く。
詳しくは5thアルバム特設サイトhttp://www.amatorecordz-5th.net/ でチェック
卍LINE
2006年よりREGGAE DeeJayとしての活動を開始。2008年には1stアルバム「卍LINE」を発表し、これまでに4枚のアルバムをリリース。“我のみ知る道、愛を持って”という信念の下、年間約80本もこなすというライブを中心に活動。待望の5thアルバム「KEY MAKER」がついに7月2日にリリースされる
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※2014年06月発行『i bought VOL.06』に掲載された記事です。
※価格・販売状況は掲載当時のものになります。