高橋ラムダが気になる4つのファッションキーワード
常に日本のファッションシーンを牽引する髙橋ラムダ。
トレンドへの嗅覚の確かさはもちろん、単に新しいものを取り入れるだけではなく、これまでに培ってきた膨大な経験値に裏付けされたスタイリングによって、日々ファッションアディクトたちをトリコにしている。そんな彼が改めて気になっている4つのキーワードとは。
目次
──今回4つのキーワード、「MA‐1」、「スエードブーツ」、「ムートンコート」、「インディアンジュエリー」を選んでいただいた際には、原点回帰という言葉も出ていましたが、ラムダさんがこの秋冬気になっているファッションはどんなものでしょうか?
「ムートンコートの形も比較的ランチコートっぽいものやPコート的な形だったりと、僕たちがなんとなくイメージしていた’90年代の男らしくちょっと土臭いアメカジのアウター的なイメージ。MA-1にしても同じで、定番中の定番的なものではあるんだけど、当時を彷彿させるものでありながら、ブラッシュアップされてる現代的な格好良さがあるんです。ラフシモンズのMA‐1とかは、昔のアイテムなんで、結構形が大味なんです。でも、今回紹介した新作のものは、どれもシルエットがかなり計算されています」
ムートンコート
ヴィンテージマニア垂涎の逸品をはじめとする主役アイテムたち
上段_Malcom Mclarlen(本人私物)
中段左_TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst. ¥638,172 (grocerystore. )
中段右_Worlds End(本人私物)
下段左_UNUSED ¥399,600 (BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS 原宿メンズストア)
下段右_nonnative ¥183,600(vendor)
──その辺りのアップデートがやはり重要になってくるわけですね。インディアンジュエリーというのも、同じく’90年代前半のアメカジ的なアイテムのひとつですよね。
「そうですね。当時から着けていたジュエリーではあるんですが、15年、20年が経った、現在のインディアンジュエリーってスタンプワークと呼ばれる型押しのデザインの印象もかなり変わっているし、とにかくシンプルでモダンというか。昔のインディアンジュエリーって、デザインが強かった分、他のものと合わせて着けるのがやりづらかったんですけど、今回紹介させてもらったアーティストものだと、合わせてつけることができるんですよね」
──今回紹介していただいたものの中には、ターコイズを使用したものは含まれていませんね。
「石を使ったものは、自分としてはちょっと強すぎちゃうんで、シルバーのみのものを選んでいますね。宮下さんとコディのやつとかは、これだけパッと見たらインディアンジュエリーにも見えないと思うんですよね。こういう昇華されたものが今の気分です。シッピーのペンダントヘッドにしても、今まで持っていたインディアンジュエリーの概念をだいぶ壊してくれたんですよね。スカッシュブロッサムっていうカボチャのお花モチーフとかも、これまでだったら小さく細々と使われてたんですけど、あえて大きなヘッドにしたりとか、モダンな印象を受けたんですよね。クロスだったら平らなものを叩き出していて、ナジョーネっていう女性の子宮をモチーフにした三日月っぽい形のやつはちゃんと鋳造で作られていて、星のやつは立体に成形されていたりと、全部作り方も違うんです。しかもシッピーのネックレスは重ね着けした時にぶつかって鳴る音まで計算されているので、その音も楽しんでいます。シルバーの扱いをいろんな面から表現しているのが面白いです」
インディアンジュエリー
シンプルなスタンプワークが固定概念を打ち砕くモダンさを表現
ネックレスすべてCippy Crazy Horse(本人私物)
バングル、リング、ピアスすべて
Cody Sanderson for TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst. (本人私物)
──スエードブーツでは、エンジニアブーツやローパーブーツ等、バリエーション豊かなセレクトとなっていますが、こちらもやはりアメカジ感が。
「エンジニアブーツが原点的なところにあるんですが、チペワのコンバットブーツも’90年代当時に、レッドウッドかバックドロップが別注をかけたことで作られ始めたスエードなんです。日本のお店の別注によって、このサンドベージュが始まっているのも格好良いなって思います。このレッドウィングのエンジニアブーツのベルトの位置も、日本のお店が別注した際に、下めに位置をずらしているんです。この位置になることで、細めのパンツに合わせてもちゃんとベルトが出るんですよね。この2足は’90年代からずっと履き続けています。グイディのブーツは正面からの印象はエンジニアブーツに似てるけど、土臭さを残しつつも洗練されたところが良いですね。色の付け方も変わってるし、シャフトっていって、この履き口の筒の部分も細くて、スキニーのパンツにも合わせられます。リオスのローパーブーツはウェスタンブーツみたいにつま先が尖りすぎていないところが気に入ってます。’90年代当時に憧れていたブランドなんです」
──当時憧れていたものが、今またラムダさんの気分にハマっているというのは面白いですね。
「もちろん、ソールの厚さだったり、切り返しのカラーリングが今っぽいものだったりっていうのは、どこの別注とかでも落とし込まれていると思うので、そういうちょっとしたことで今っぽい印象のものになっているんだと思います」
スエードブーツ
ジャンルも時代も飛び越えた多様なスエードブーツ
奥左_RED WING(本人私物)
奥中_RIOS of MERCEDES ¥98,820(BAILEY STOCKMAN )
奥右_UNUSED ¥68,040(margin)
手前左_GUID(本人私物)
手前右_CHIPPEWA(本人私物)
──やはり、原点回帰的な部分はありつつも、昔のままではなく、ディティールやシルエット、カラーリングがアップデートされているというのが重要ってことですね。
「そこはやはり重要ですね。あとはそこに合わせるコーディネイトのサイズ感だったりで今っぽいシルエットに落とし込むことで着た時の印象が違ってきますね」
──ラムダさんが感じている、今っぽさというのはどういったものなのでしょうか?
「一概には言えないんですけど、シンプルでモダンなテイストっていうところなんですかね。ワールズ・ エンドのコートとかって、やはり今だと着にくいんですが、今回紹介した新作のコートとかって、どこかはちゃんと継承しつつも、少し要素を削ることで今っぽく着れる。アンユーズドのコートだったら、バッファローコートっぽい雰囲気があるけど、スナップボタンになっていたりとか。ノンネイティブのだったら着丈とかシルエットが洗練されていたりとか。ソロイストのは逆に、スーパーアップグレード版みたいな印象かな。MA‐1にしても、どのブランドも、これまでに通ってきたものを再度解釈して表現し直しているっていうのが面白いですよね。どこのブランドもまったく違ったやり方で作り直していて、どれも今だなーって気がするんだよね」
MA-1
永遠のスタンダードアイテムでありながら常に輝くミリタリーブルゾン
上段左_DRIES VAN NOTEN ¥182,520(DRIES VAN NOTEN )
上段右_UEG ¥51,840(GEM projector)
中段左_RAF SIMONS (本人私物)
中段右_TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst. ¥139,212(grocerystore. )
下段_RAF SIMONS(本人私物)
──ラムダさんは職業柄、本当にたくさんの洋服を目にしていると思いますが、新しいものの情報はどのように得られているんですか?
「お店はとにかくよくチェックしますね。気になるものを見つけたら、とにかく海外のサイトも堀りまくりますね」
──では、ラムダさん的に気になるお店ってありますか?
「面白いなって思うのは、SUPER A MARKETかな。今回紹介したものをセレクトしているかっていったら、そういうわけでもないんですが、ジュエリーもハイブランドもドメスティックもピックアップしていて。もちろんそれはどこもやっていることなんだけど、そのバランスが特に面白い、購買意欲が湧くお店なんです」
髙橋ラムダ
2005年より白山春久氏に師事、2008年に独立しスタイリストとして活動を始める。現在では雑誌媒体から俳優やミュージシャンのスタイリング等、多岐に渡り活動を行う。多様なバックボーンを昇華した、新たなビジュアルの提案に高い定評のあるトップスタイリスト
※2014年10月発行『i bought VOL.07』に掲載された記事です。
※価格・販売状況は掲載当時のものになります。