『ドラゴン桜』『砂の栄冠』など人気漫画からビジネス書まで手掛ける三田紀房とは

報酬目的に漫画家になったという漫画家・三田紀房とは。東大受験で話題の『ドラゴン桜』、異色の野球漫画『砂の栄冠』、資金運用・ビジネス・自己啓発性などにも繋がる漫画や著書も手掛ける三田紀房の作品誕生秘話やヒット要因など、三田紀房の魅力に迫る。

さくらい*

目次

三田紀房が漫画家になるまでの経緯

 

三田紀房のプロフィール

三田紀房(みたのりふさ)

漫画家

1958年1月4日生まれ、岩手県出身

明治大学政治経済学部卒業

 

三田紀房初めての作品で講談社主催「ちばてつや賞」一般部門に入選

三田紀房が漫画家になる前は、自身はサラリーマンであったが衣料品を営んでいた父が体調を崩したことで兄と共に衣料品を継いだ。

父の死後に店の莫大な借金を抱える中、仕入れることにお金をかけるより一人でものを作って売るほうが効率的だと考えた矢先に、漫画誌の新人賞募集の広告を目にする。

 

実行することに意味があると考えていたため、見よう見まねでありながらも漫画を描き「ちばてつや賞」一般部門に入選できた。

 

義姉が漫画家村上もとか(代表作『JIN―仁―』)の奥様と親友だった縁から、三田紀房が最初に描いた作品を村上もとかが見て、可能性を認めてもらえたという幸運もあり、三田紀房は30歳で初めての作品を新人賞に応募し、講談社主催の「ちばてつや賞」の一般部門に入選した。

 

三田紀房の代表作、漫画『ドラゴン桜』

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講談社の漫画雑誌『モーニング』にて連載(2003年~2007年)された。全21巻。

 

元暴走族の駆け出し弁護士・桜木建二(さくらぎけんじ)が、経営破綻状態となった落ちこぼれ高校、私立龍山高等学校を5年後に東大合格者100人という進学実績を目標に掲げ、立て直していく物語。

生徒に様々な受験テクニック、勉強法、心得を教えていく内容となっており、受験業界で話題となった作品。

 

三田紀房と担当編集者佐渡島庸平による『ドラゴン桜』誕生秘話

三田紀房が東大に100人通す学園ものというアイディアを担当編集者であった東大出身の佐渡島庸平(現株式会社コルク代表)に話したところ、「甲子園に比べると東大はずっと簡単だから、そんな企画はやめた方がいいと思う」という答えがかえってきたことが『ドラゴン桜』誕生のきっかけである。

 

『ドラゴン桜』の4巻くらいまでは、佐渡島庸平の勉強方法だという。また『ドラゴン桜』では佐渡島庸平の東大の同級生の勉強方法が反映されてもいる。

 

漫画『ドラゴン桜』ヒットの理由

自分の漫画は空席を見つけてヒットしたと語る三田紀房。

『ドラゴン桜』がヒットした理由も、ゆとり教育全盛の時代に、逆の立場のつめ込み教育により東大を目指す内容は、世間の「空席」となっていたこと、連載当時、雑誌『モーニング』では受験マンガという分野が「空席」になっていたこと、更にスポ根マンガの王道の手法をとっていることにより「受験×スポ根」という独占的なポジションを得ることができたためだという。

 

日韓でドラマ化された『ドラゴン桜』

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実際の東大受験勉強でも活用できる内容ばかりか、人間関係のおもしろさ、変わっていく学校の雰囲気と魅力満載の『ドラゴン桜』は、日韓でドラマ化された。

 

三田紀房の漫画『砂の栄冠』は一風変わった野球漫画

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講談社の漫画雑誌『週刊ヤングマガジン』にて連載(2010年~2015年)された。全19巻。

選抜高校野球大会に2度出場した進学校の群馬県立高崎高校がモデルの野球漫画。

 

「そこそこの成績を残せればいい」と思っていた高校野球のキャプテンが、支援者から1000万円という現金を託されたことで本気で甲子園を目指すという内容で、高校野球と金(かね)がテーマが一般的な野球漫画と比べて異色な作品。

 

『砂の栄冠』のアイデアの元は佐賀北高校の実話

『砂の栄冠』では、支援者から1000万円を託された高校生が甲子園を目指す物語だが、2007年の甲子園で優勝した佐賀北高校の記事からインスパイアを受けている。

 

佐賀北高校のグラウンドに毎日来てはヤジを飛ばすおじさんが、ある日「今年のチームは甲子園なんて行けない。もし本当に甲子園に出られたら、おまえらに100万円やる」と言い放ち、その翌日から姿を現さなくなった。

奮起した佐賀北高校球児は見事甲子園出場を決め、甲子園で勝ち進んでいくも、ヤジを飛ばすおじさんは現れず、佐賀北高校キャプテンが「お金よこせとは言わないから甲子園に応援にきてよ」と呼びかける記事がスポーツ新聞に掲載されていた件が『砂の栄冠』でのアイディアの元になっている。

 

『砂の栄冠』では、ダメな監督に見切りをつけ、資金運用で甲子園出場を目指す野球部という設定。

 

三田紀房の代表作といわれる『ドラゴン桜』以上の名作ともいわれる『砂の栄冠』。

連載終了に嘆く声も。

 

漫画家はビジネスチャンスにあふれた業界と考える三田紀房

日常で見聞きしたことをすぐネタにする三田紀房は、ネタ収集のために漫画を読むなどあえてアイディアを漁る努力は行わない。

「これがやりたい」という自分の気持ちに嘘をつくことなく、シンプルに行動する。

理想論よりもロジカルなストーリーを重視する三田紀房の、漫画家としてのビジネス論とは。

 

漫画と個人商店は似ているもの

漫画と個人商店は共通点が多く、マンガ誌での新連載はショッピングモールに店を出すようなもの。

読者のニーズを常に意識し、あえて「逆」を選んでトップを目指す。

「そこそこの質で生活できる」という考えはかえってリスクを招き、ほかの漫画家に抜かれて埋没されてしまう。

と考える三田紀房。

 

金融漫画『ミナミの帝王』から得た手法でヒットした『クロカン』

『クロカン』を連載していた『週刊漫画ゴラク』では、金融漫画『ミナミの帝王』が人気を誇っていた。

三田紀房は『ミナミの帝王』から3つの方法を吸収したことで、『クロカン』の大ヒットに繋がったと述べる。

 

1,登場人物の「大きな顔」

2,大きな顔の横に書かれた「決め台詞」

3,ベタな絵による「比喩表現」

 

特に比喩表現は、ベタな表現を続けることで読者に強い印象を残すことができる、と三田紀房は考える。

 

徹夜することなく、締め切りを守る自己管理

三田紀房の漫画家としてのビジネス論に、「徹夜はしないが、締め切りは守る」という考えがある。

漫画家の事情を知った三田紀房は、アシスタントにお菓子を与えつつ徹夜をしてでも原稿を仕上げるといった生活をかつて送っていたが、不健康になっていくアシスタントに気付いて「徹夜をやめよう」と提案を掲げる。

 

漫画家もアシスタントも特別な人間ではないので、徹夜を避けて朝早くから集中して作業を行う。三田紀房が決めた考え方にアシスタントが賛成し、作業の質が向上した。

 

「高品質な作品が仕上がるためなら締め切りを過ぎても許される」という世間の姿勢に対し、三田紀房は『インベスターZ』において背景や小物をデジタルに仕上げるなどを行うことで期日を必ず守っている。

 

「連載を描き続ける」意思の大切さ

かっこよく見せるよりも、「連載を書き続けること」を重要とし、独自の表現や見栄などに悩むよりも、まずはペンを握ることからすべては始まると三田紀房は考える。

 

資金運用・ビジネスセンス・自己啓発に繋がる三田紀房の漫画と著書

資金運用やビジネス思考、自己啓発性を訴える三田紀房の漫画と著書の代表作をそれぞれ4選紹介。

 

三田紀房が手掛けた漫画の代表作

三田紀房『クロカン』

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『週刊漫画ゴラク』の人気作。当時圧倒的に人気を誇っていた金融マンガ『ミナミの帝王』から表現を真似したことでヒットした作品でもある。

桐野高校野球部監督の黒木竜次(通称クロカン)は、低迷していた野球部を県内の強豪に育て上げていたが、評判の悪さにより苦境に立たされていたなか大胆な策を試みる。

 

自立を促し、選手たちの能力を引き出すマネジメント術が管理職に就く人々におすすめだ。

 

三田紀房『マネーの拳』

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主人公は元ボクシングの世界チャンピオン。タレント兼居酒屋の経営をしていたが、毎月赤字続きのなかテレビ番組で会長と出会う。

ビジネス思考の指針となるほか、雇用主である主人公と従業員の対立など人間関係も描かれている。

 

三田紀房『インベスターZ』

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キャッチフレーズは「せーのっ!右肩上がり」。

 

「お金儲けは悪」と考える世間に対し、子どもたちが3,000億円を資金運用することで真っ向勝負。

対立という基本を貫きながらも、子どもが大金を運用するという新鮮さが魅力だ。

作中には他人から受け継ぐ「居抜き起業」で喫茶店を始めた人物が登場。実在するラーメン屋「蒙古タンメン中本」起業から吸収したアイディアが盛り込まれている。

1話目から人物以外の背景や小物を外注で作画している作品。

 

三田紀房『アルキメデスの大戦』

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戦艦大和の建造資金にまつわる物語。

次の海の戦いを見据える「航空主兵主義」派と、日本海軍の伝統を尊重する「大艦巨砲主義」派の闘争。

主人公である天才数学者は、航空主兵主義派のもとで数学の力を駆使して頭脳戦に挑む。

 

三田紀房が手掛けた著書の代表作

三田紀房『個性を捨てろ!型にはまれ!』

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ラクして結果を出す大切さを唱える自己啓発書。

 

三田紀房『汗をかかずにトップを奪え!~『ドラゴン桜』流ビジネス突破塾~』

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『ドラゴン桜』の主人公である桜木建二が、「リターンを持つ人脈の重要性」や「手帳に結果を書き込む」などロジカルに仕事成功術を説く一冊。

 

三田紀房 × 田尻賢誉『野球バカは野球でしかビジネスを考えられない』

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甲子園に勝つ高校野球の名将から、強い組織の秘密を解き明かす。

 

三田紀房『プレゼンの極意はマンガに学べ』

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職種が異なっても、自分の考えを伝えることで相手の心を動かす重要性は欠かせない。

『ドラゴン桜』をはじめとした名作で読者の心を動かした三田紀房が、漫画を介して「魅せる」プレゼン方法を紹介。

 

関連リンク

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三田紀房『ドラゴン桜』 ドラマ版

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さくらい*

「わかりやすくお伝えすること」がモットーのアーケードゲーマー。

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