((さらうんど))/ 鴨田潤の薦める劇団『ヨーロッパ企画』

レンタルではなく購入したDVDについて、自らの言葉で綴ってくれたのは、小説家としても活動する鴨田潤。((さらうんど))やイルリメとさまざまな名義で多様な活動を行う氏ならではの、DVDを観ての感想が詰まっている。本田劇場で行われたヨーロッパ企画のある劇について、今回は綴ってもらった。

i bought編集部

鴨田潤 イルリメ /((さらうんど)))

JUN KAMODA 鴨田 潤(イルリメ/((さらうんど))))

 

鴨田潤 イルリメ /((さらうんど)))

 

ラッパー・トラックメイカー・作詞家・プロデューサーとしてカクバリズムに所属するイルリメ、小説家としても活動する鴨田潤、そして各方面で話題となっているTrack Boysと組んだシティポップバンド(((さらうんど)))ではヴォーカル&ギターとして、さまざまな名義で幅広く活動中。4月に(((さらうんど)))で、シングル「空中分解するアイラビュー」をリリースし、7月17日にはアルバム「New Age」を発表する

 

『ロベルトの操縦』

 

『ロベルトの操縦』

 

 

 

購入場所_本田劇場ヨーロッパ企画物販   
購入価格_2,500円(税抜)
購入時期_昨年12月

 

劇場で購入したヨーロッパ企画のDVD「ロベルトの操縦」について

 

去年の12月、京都を拠点に活動をする劇団「ヨーロッパ企画」の最新公演「月とスイートスポット」を本多劇場へ観に行った。
ヨーロッパ企画は芝居以外にもテレビやラジオで番組を持っていたり、彼らの芝居は映画化(「サマータイムマシン・ブルース」や「曲がれスプーン」)されているので知っている人も多く、劇場は連日大入り。観に行ったその日もファンの人たちが長い列を作っていた。

普段あまり芝居なんて観ない、テレビドラマすら観ない自分も、劇場に入り座ってみれば場内から聞こえてくる期待の吐息で同じように膨らんでゆき、入り口で受け取ったチラシなどに目を通しているとBGMの音量が高まり、幕が開いた。
そこから1時間40分。演者から発せられる会話を慎重に追い、物語を読んでいく。
抗争で重傷を負ったチンピラたちが衰弱と不安から逃れようと「スイートスポット」という注射を打つ。すると彼らの懐かしかった過去が目の前に現れた。過去と現実と未来の存在に頭を困惑させるチンピラたちの洒脱なやり取りに笑いながら、気がつけばぐいぐいと頭の中を占領され、物語の意外な展開や舞台の仕掛けに驚いているとカタルシスが待っている。

惹き込まれました。終わったあと譲り受けた感動を肺に膨らませ、気がつけばファンの人たちと同じように、いや、あまり慣れていない人間が受けた衝撃の方が強いため、彼ら彼女たち以上に、大きな手で下りた幕の前で礼をする出演者に拍手を贈っていた。
終演後、席を立っても振り回された感情と興奮は収まるわけなく、ふらふらと物販コーナーへ向かった。
今の興奮を形として、記念として持って帰りたい、そういう欲求につき動かされ眺めていると、過去の公演がDVDとして売られている。これだけ面白い人たちだから、とDVDの中から一番新しい公演「ロベルトの操縦」を購入して帰宅した。

 

翌日、いや昨日はいいもの観たな、という余韻を噛みしめながらお土産に購入したDVDを観てみた。
舞台の上には大きな機械が象徴のように″でんと置かれている。
その前で、キャッチボールをする役者たちの会話からそれが「ロベルト」という乗り物だと知り、彼らは砂漠の駐屯地で出兵を待つ兵士だとわかった。
乗り物と言われれば確かにそうだが、いったい何専用の軍用機か想像しがたい、あまりにもアンバランスな、まるで子どもの頃見ていたヒーローもののマシンが巨大化したような形状である。
「ロベルト」は戦地の最前線に配置されているが出動の機会はなかなか現れないらしい。その待機状態から、おかげでキャッチボールが上達してゆく兵士たちを、同じく駐屯地に配属されたナースがそそのかし、2キロ先にあるらしい自販機へコーラを買いに行くというかわいい理由で、軍には内緒でロベルトを動かしてしまう。

 

この、思わず拍子抜けしてしまうような理由から物語が展開してしまうところに劇団の持ち味がある。「コーラを買いに行く」という誰でも経験したことのあるキャッチーなノリで、観ている人を一気に同じ目線に持ち込み、どんな事象でもヨーロッパ企画の箱庭に招くことのできる成分だと思った。
走り出したロベルトは、規則を破った罪悪感、「こんなところまで来ているけどはたして大丈夫か?」、「というか全然見当たらないけど本当に自販機はあるのか?」といった決断の荒野を彷徨する間にもスピードは出たまま、進んでしまっているため相談もままならず、「もうちょっと、もうちょっと」のチキンレース精神で走り続けてしまう。そして彼らと同じように、勝手に抜け出して海へ向かおうとする兵士たちと出会い、海の誘惑に呑まれてしまう。
目的を変更したロベルトは人数を増やし海へ。さらに同じく海へ向かっていた兵士とナースのカップルを拾い、その中でも続く「行こうか戻ろうか」のチキンレースで海へ走っていると、さらにさまざまな人たちを拾い、やがてロベルトの走る理由は転々と物語とともに加速してゆく。

 

舞台の上で、巨大な「ロベルト」が走っている。
演技や小道具、演出が一丸となり、舞台上で動かないロベルトを走らせている。
そんな「走らせたい」という意思を観続けていると、次第に観ているこちらも「走らせたい」と思うようになり、気がつけばロベルトを走らせる側に回っている。

そんな一直線な気持ちに巻き込まれたまま、ロベルトを操縦した先にはやはり、彼らヨーロッパ企画特有の、あのゆるやかなカタルシス。感動が待っていたのでした。

 

 

※2013年6月発行『i bought VOL.02』に掲載された記事です。

※価格・販売状況は掲載当時のものになります。

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